闘う弁護士の不動産投資小話~兵法 2019年4月号
地主が承諾しない借地権の譲渡
裁判所に申し立て可能
先日、東京都心5区の好立地にて借地権付き建物の売り情報を得ました。木造築古の建物にテナントが入っていて、賃料坪単価の相場が4万円のところを坪2万5000円で貸している物件です。売り主は、表面利回り5・5%程度で売りたいようですが、地主が借地権の譲渡承諾を出さないということで、なかなか売れないとのことでした。
そこで、私は利回り10%を超える金額であれば購入を検討しますと大幅に指し値を入れました。指し値が通り、賃料を相場に増額できれば、かなりの高利回り物件となります。
ところで、地主が借地権の譲渡に関して承諾をしない場合、実際に借地権を買うことができるのでしょうか。この点、借地権者は、裁判所に対して地主の承諾に代わる許可の裁判を求めることができます(借地借家法第19条1項)。つまり、裁判所が地主の代わりに借地権の譲渡に関して承諾を行うのです。そして、借地権の譲受人がきちんと地代を支払う能力があり、かつ地主との信頼関係をきちんと構築できるのであれば、承諾が出ないというケースは考えにくいです。
ただし、代諾許可の裁判の申し立てが行われた場合、地主側からの対抗手段として、自らに対して賃借権の譲渡をするように裁判所に対して申し立てを行う事ができます(借地借家法第19条3項~介入権の行使)。この申し立てがあると、裁判所が相当の対価を定めて地主に買い受けを認める決定をすることができます。
なお、ここでいう相当の対価とは、建物の価格と借地権価格の合計から承諾料相当額を控除した額とするのが通常です。
このように、地主が譲渡承諾しない借地権物件は、実際に買うことができるかどうかは未確定ですので、停止条件付きの売買契約となります。
また、裁判所の代諾許可が得られても、地主の金融機関に対する担保設定に関する承諾書面が得られなければ(これは代諾許可できません)、融資が付きませんので、買い手は現金で購入せざるを得ません。したがって、都心好立地にもかかわらず、利回り10%超えで買える可能性が出てくるのです。