闘う弁護士の不動産投資小話~兵法 2019年5月号
生産側に回る個人投資家
更地を仕入れて建築後に販売へ
先日、私の保有している新宿区の土地について、不動産業者がどうしても更地のまま売ってほしいと言うので、価格を提示しました。その価格は相場通りなのですが、その業者さんは「それはエンド価格ではないですか…」と不満を口にしていました。私は、更地のまま売らないでも、そこにマンションを建築する選択肢もありましたので、交渉は決裂となりました。
ここで、「エンド価格」とは、いわゆる「エンド(ユーザー)」と呼ばれる最終的な消費者が買う価格という意味です。
不動産の生産過程においても、生産者→問屋→小売り→消費者という流通過程があります。そして、不動産の最終消費者は、買った価格以上の利益を上げることはできません。
例えば、先の不動産業者(A社)は、私から卸値で土地を仕入れて、マンションを建築するなど物件を生産して、それをワンルームマンション販売業者(B社)等に区分で小売りさせます。区分を買うのは、弁護士や医師、高収入のサラリーマン(Cさん)です。私の事務所にも、ワンルームマンションの販売業者から営業電話がかかってきます。そのようなエンド候補の名簿があるので、B社はコールセンターからリストに電話をかけるのです。
そして、この事例で、最も高い利益を上げるのはA社です。次いで、A社から手数料を受け取るB社が利益を上げます。エンドであるCさんはあまりもうかりません。
では、業者ではない個人投資家は、不動産投資でもうけることはできないのでしょうか。
この点、製造業では消費者は生産者になるのは難しいのに対して、不動産においては、比較的小さなリスクで個人投資家が生産者側に回ることができてしまいます。事実、私の周りには、普通のサラリーマンが都心で更地を安く仕入れて、マンションを建築して、相場より高い利回りで運営するという投資をしている人が複数います(そして、皆さん、利益が出るころに脱サラに成功しています)。
今後は、個人投資家の間で、小ぶりな開発型投資が浸透していくものと思います。