闘う弁護士の不動産投資小話~兵法 2020年4月号
利益目的は事業性高いと判断
売却前提の宅建業者登録
建物を新築する投資がはやってきましたが、完成物件をすぐに売却する場合、宅建業者登録は必要でしょうか?
この点、宅地建物取引業法では、「業として」行う場合は、業者登録が必要と定められています(同法2条2項、3条、12条)。
ところが、一般の方の感覚としては、「1回限りの取引であれば、〝業として〟にあたらないのではないか?」「間隔が空いていれば、2回取引があっても許されるのではないか?」と思われる方が多いようです。
この点については、国土交通省の公表している「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」において次のように説明されています。「業として行なう」判断基準として、①取引の対象者(広く一般の者を対象に取引を行おうとするものは事業性が高く、取引の当事者に特定の関係が認められるものは事業性が低い)②取引の目的(利益を目的とするものは事業性が高く、特定の資金需要の充足を目的とするものは事業性が低い)③取引対象物件の取得経緯(転売するために取得した物件の取引は事業性が高く、相続または自ら使用するために取得した物件の取引は事業性が低い)④取引の態様(自ら購入者を募り一般消費者に直接販売しようとするものは事業性が高く、宅地建物取引業者に代理または媒介を依頼して販売しようとするものは事業性が低い)⑤取引の反復継続性(反復継続的に取引を行おうとするものは事業性が高く、1回限りの取引として行おうとするものは事業性が低い)というさまざまな要因をもとに、事業性を判断するということになっています。
例えば、相続税の納税を目的として(②)、相続した土地を(③)1回限りの不動産取引として行う(⑤)という場合は、極めて事業性が低く、「業として」にあたらないと判断されるでしょう。
他方で、冒頭のような、土地を仕入れて建物を完成させて、すぐに売却する行為は、仮に1回限りの不動産取引を行う(⑤)としても、売却益を目的として(②)、わざわざ土地を仕入れる(③)のですから、「業として」にあたる可能性が高いです。