闘う弁護士の不動産投資小話~兵法 2019年8月号
保有方法で異なる資産の評価
金融機関への〝見せ方〟が重要
プロ野球日本ハムに今年ドラフト1位で入団した吉田輝星投手について、野球評論家の権藤博氏は、次のように述べています。
「日本ハムの先輩の大谷翔平(エンゼルス)の新人時代になかったものを、1つ持ってる。それは速球を球速表示以上に速く見せる能力だ。大谷は入団後しばらく、160キロの球を投げても打たれていた。球持ちの良さやフォームなどの微妙な差で、投球の「見え方」が変わる。そのため、いくら速くても打たれやすいとか、球速表示はさほどでもないのに空振りが取れる、という違いが出てくる」
このように客観的な事実(球速)は同じであるにもかかわらず、見せ方によって効果(打者が空振りするかどうか)が変わってくるということは実はよくあります。
不動産投資の世界で言えば、同じく自己資産5000万円を持っている人であっても、無担保の収益不動産(銀行評価5000万円)を持っているAさんと、現預金5000万円を持っているBさんでは、実は、Aさんの方が銀行評価が高い場合があります。
Aさんは、もともと5000万円の融資を受けて収益不動産を買ったのですが、賃料収入その他で5000万円が貯蓄できた段階で、借り入れ金を一括返済するか、それとも借り入れ金はそのままで(抵当権付きの収益物件として保有)、5000万円を現預金に置いておくか悩みました。そこで、付き合いのある金融機関にヒヤリングしたところ、「5000万円借り入れあり、抵当権付き不動産、預貯金5000万円」と「借り入れなし、無担保の5000万円の不動産」とでは、純資産は同じく5000万円のはずですが、後者の方が銀行評価は高いということでした。
銀行によっても考え方が異なると思いますが、現預金はすぐに費消されてしまう可能性があるとか、借入金がないことが高い評価を得られるといった理由でしょうか。
重要なことは、同じ事実であっても、相手への見せ方によって効果が変わるということです。
不動産投資では、自身の経営資源を戦略的に使い切りたいものです。