闘う弁護士の不動産投資小話~兵法 2020年2月号
両手仲介を狙う「囲い込み」
属性の良い買主への売却に利用
大手の仲介会社は、物件を「囲い込み」する傾向にあります。
「囲い込み」とは売主から売却の媒介契約を依頼された物件を、他の不動産業者に契約させないことをいいます。例えば、別の不動産業者から「○○の物件を購入希望の人がいるので物件を案内させてほしい」と電話があっても「すみません、この物件は契約予定です」とうそをつき、紹介を断ります。このように自社でガッチリと物件をつかんで放さないことから、「囲い込み」と呼ばれるようになりました。
このような囲い込みが行われると、売れる物件が売れなくなったり、価格を下げざるを得なくなったりと、売主の被害は計り知れません。
大手仲介がなぜ囲い込みをするかと言うと、両手仲介がしたいからです。両手仲介とは、1つの物件の不動産売買取引において、1社の不動産業者が、売主と買主の双方の仲介を行い、その両方から仲介手数料を受領することを言います。
両手仲介は本来的に双方代理ですので、依頼者の利益を害する可能性を秘めていますが、宅建業法により認められているので、仲介手数料を両手でもらいたい大手仲介は、両手にこだわるのです。
私の会社も宅建業者登録していますので、レインズを見て(当社が買い側の仲介に入る前提で)大手仲介が載せている物件に電話をすると、毎度「契約予定です」「申し込みが入りました」といわれます(長期間売れ残っている物件は、片手仲介でも売りさばきたいので、取り次いでくれます)。ところが、「当社は買主で、仲介手数料を支払う(両手で仲介させてあげる)」と伝えると、手のひらを反すように丁重な対応となり、物件を取り次いでくれるようになります。片手仲介が前提だと、物件の資料さえ送ってもらえないこともあります。
この問題は、いずれ規制が入ると思いますが、まだ先の話になると思いますので、「大手=両手仲介」という前提に立って、それを利用するように切り替えるほかありません。
利用というのは、属性のよい買主を抱える大手仲介の担当者に、「囲い込んでもよいので当社の物件を優先して売却してくれ」と発奮してもらうのです。