闘う弁護士の不動産投資小話~兵法 2020年3月号
複数の価格法を比較活用
実需用地に収益物件を建築
本日は、不動産投資における『アービトラージ』について、紹介します。
アービトラージとは、同じ商品について2つ以上の評価がなされる場合に、低い価格で購入し、高い価格で売却することで、確実に利益を得る手法をいいます。同じ商品について2つ以上の評価がなされる例として、都心タワーマンションの1室を売却する場合に、賃借人がいるままで売却する場合と、賃借人が退去した後に部屋を奇麗にして売却する場合とでは、売値に差が出ます。賃借人がいるままで売却する場合は、収益還元法で価格が評価され、賃料の年額を投資家の期待する利回りで割り戻すことで価格が決まります。他方で、賃借人が退去してから売却する場合は、実需の富裕層が居住目的で購入しますので、取引事例比較法で価格が決まります。多くの場合、賃借人が退去した後に売却した方が高く売れるでしょう。
このように、不動産投資におけるアービトラージとは、要するに、収益還元法で決まる価格と取引事例比較法で決まる価格との乖離(かいり)に着目して投資する手法をいいます。私の投資手法は都心部で土地を購入して、収益物件を建築するものですが、土地の仕入れにアービトラージを使います。通常、戸建てを建築するような住宅地について、取引事例比較法で決まる価格で購入し、そこに収益物件を建築した後に、収益還元法で決まる価格で投資家に売却するのです。実需用地は、実需の出せる予算の上限が決まっていますので、昨今のような不動産価格が上昇している時期でも、バブルとまではなりません。他方で、現在の都心部の商業用地はバブルの様相を呈しています。
誰もが収益物件を建築して利益を得ようとしている土地は、収益還元法でギリギリまで高く評価され、もはや利益が出ない程度に土地が高くなっています。ですので、私は、収益物件を建築する土地としては割安な住宅地で土地を仕入れ、完成後は、利回り商品として投資家に売却しているのです。
アービトラージはさまざまな投資局面で有効です。投資家の腕の見せどころといえるでしょう。