闘う弁護士の不動産投資小話~兵法 2020年5月号
商業系賃料は大幅減少
有事でも住居系は稼働率安定
本原稿執筆時点(2020年4月5日)で、新型コロナウイルスの世界の感染者数は累計100万人を突破し、死亡者数は5万7000人程度となっています。日本国内では、感染者数は累計3271人、死亡者数は70人となっています(厚生労働省発表。ただし、横浜港に寄港したクルーズ船は除く)。新型コロナウイルスの感染拡大を受け世界経済の先行き不透明感が高まる中、世界の株式市場は大きく下落しています。約50の株式市場の動向を示すMSCI全世界株指数(ACWI)は、1~3月期に約22%下落。日経平均株価は1~3月期に約2割下落しています。2008年の金融危機以来の下げとなりました。
では、不動産投資に対しては、今回のような有事がどのような影響を与えるでしょうか。その判断を下すためには、過去の有事の際(リーマンショックや東日本大震災)に、不動産投資の数値がどのように動いたのかを探ることが有益です。
この点、オフィス平均賃料については、2009年から2013年にかけて16%程度下がったのに対し、都心レジ(住居)の平均賃料はほぼ横ばいであったのに加えて、ワンルームタイプの住居の平均稼働率は2009年9月から同年年末にかけて3%弱下がった程度であり、その後すぐに回復していきます。東日本大震災の際には稼働率は下がりませんでした。オフィスについてはボラティリティが大きいのに対して、レジについては有事が来ようと入居ニーズは変わらないことから、ボラティリティが小さく、賃料の動向について影響はほぼなかったと言えます。
加えて、今回のコロナショックがリーマンショックや東日本大震災の際と大きく異なるのは、飲食店やホテル・旅館の売り上げが全国的に激減していることです。店舗やホテル・旅館の賃料滞納や賃料の減額要請は極端に増える見込みです。そうしますと、今回の有事によって、ボラティリティの差はより際立つことになりそうです。商業系テナントの賃料は大きく減収となり、住居系テナントの賃料収入との差は大きくなると思われます。やはりレジに投資するという手法は安定しているということです