闘う弁護士の不動産投資小話~兵法 2019年2月号
不動産は購入時に勝敗確定
事業収支の見極めが鍵
剣道の世界には、「勝ってから斬る」という極意があります。剣の達人は、実際に刀を抜く前に、相手の剣の軌道を見切り、相手が動いた瞬間に斬り付ける構えを見せ、相手を萎縮させて動けなくしてしまいます。対峙しているだけで、絶対優位に立ち、すでに勝負がついた状態となります。後は、萎縮して精神的に固まっている相手をそっと処理するだけだというのです。「斬ったから勝った」のではなく、「勝ってから斬る」のです。
このことは、剣の世界や格闘技に限らず、ビジネスや投資の世界にも当然当てはまります。物事は、準備段階ですでに成功か失敗かが決まっていることを指しています。不動産投資で言えば、物件を購入する際に、勝敗が決まってしまいます。「買ってから勝つ」のではなく、「勝ってから買う」のです。
不動産投資で購入時に勝つための具体的な手法は、物件を賃貸に出す場合に、誰にいくらで貸せるのかを予測することから始まります。不動産投資の目的は要するに賃料を受け取ることですので、賃料がいくらになるのかが最重要です。現在のレントロールや業者の提案するサブリースの金額をうのみにすることなく、真実の賃料を見抜くことが必要です。シェアハウスの賃料を「サブリースで保証します」というセールストークを信じて投資をするのは、購入時点で負けが確定していたと言わざるを得ません。
逆に、誰に貸すと最も高く貸せるのかを検討すると、バリューアップさせることができます。現在のマンションの賃料を基に物件価格が決まっているケースで、購入後にコンバージョン(用途変更)してホテルとすることで、賃料を飛躍的に高くすることができるという判断ができれば、買う時点で勝ったと言えるでしょう。
バカ高い賃料を信じて物件を高値づかみするのか、最有効活用できていない物件を安く買ってきて、バリューアップさせるのかが、まさに勝負の分かれ目と言えましょう。不動産投資の達人は、このように実際の価値と価格の乖離(かいり)を見抜きます。剣の達人が相手の剣の軌道を見切るように、価値と価格の乖離を見抜く目を養いましょう。