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お知らせ&活動報告

NOTICE AND ACTIVITY REPORTS

闘う弁護士の不動産投資小話~兵法 2019年10月号

代替地提案のタイミング
立ち退き訴訟の交渉術

 先日、立ち退きの訴訟で和解することができました。港区の一等地に立つ古アパートに1人だけ残っている賃借人に対して、オーナーから契約終了に伴い、更新の拒絶をしたのですが、賃借人は断固として拒否。アパートを建て替えたいオーナーと商売を継続したい賃借人の争いで、私はオーナー側の弁護士でした。
 本件、一審はオーナー勝利で、「賃借人は、立ち退き料500万円と引き換えに物件を明け渡せ」というものでした。立ち退き料の金額は鑑定評価通りで、明け渡しを認めてもらえたこと自体がオーナー勝利といえました。これに対して賃借人は控訴。あくまで正当事由を争い、賃貸借契約の継続を主張してきました。控訴審でもオーナー勝訴は既定路線で進む中、賃借人は立ち退き料を増額する和解案も受け入れません。控訴審で負けても、上告するという姿勢です。
 もちろん、上告が受理されることもなく、判決通りの金額を支払えばオーナーの計画は実行できるのですが、上告までされると時間も費用もかかりますし、強制執行の手間も相当です。私は、このような賃借人に対しては、必ず代替地を用意することにしています。彼らはお金ではないのです。
 ところが、この代替地を一審の段階で和解案として出しても、「部屋の間取りが使いにくい」「通りからの視認性が悪い」などと難癖をつけて拒否されたり、あるいは代替地を気に入ってくれたとしても、「移転による損失は計り知れない」として、法外な補償を求められたりもします。
 そこで、どうするのかというと、まず一審の勝訴判決を取ることです。一審の段階では、賃借人も「勝てるかも」という淡い期待を抱いています。しかし、一審で負けて、控訴審の裁判官からも説得されるうちに、自分の主張が通るものではないことに気付きます。その段階で初めて虎の子の代替地を出すのです。賃借人からすると、ワラにもすがる思いで和解案に飛びつくことでしょう。アメとムチといいますが、先にアメを与えると相手はつけ上がります。十分なムチを振るった後に、そっとアメを与えてあげると感謝して和解してもらえるものです。

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